「マニラ」
http://ameblo.jp/hirot-blue/entry-10006852036.html
の続きです。

 

「北朝鮮核問題」に関するセッション。中国、韓国、北朝鮮の人がプレゼンテーションしました。もちろん、参加者が集中して聞いていたのが、北朝鮮のプレゼンでした。かいつまむと…

 

・ 南北関係は好転してきているのに、朝鮮半島の依然として不安定で緊張している。

・ 米国の現政権は、冷戦スタイルの古い考えで、北朝鮮に対して敵対的な政策を遂行している。南北関係の発展を阻害し、北朝鮮の政治システムを崩壊させるため、北朝鮮の孤立化や疲弊を図る政策をとっている。

・ 以下、米国がいかにして北朝鮮に侵略しようとしているかについての説明が続く:戦争計画の見直し、先制的な核攻撃、韓国との軍事演習…

・ 朝鮮半島の非核化は、北朝鮮だけでは達成できない:米国は、朝鮮半島から核兵器を撤去し、核戦争の脅威を除去し、北朝鮮が核兵器を作らざるを得ない原因を除去すべき

・ 解決は、「コミットメントとコミットメント」、「行動と行動」の原則で

・ 朝鮮半島非核化のための方法

   1)米国は敵対政策を放棄すべき:「北朝鮮人権法」とか、根拠のない不法なTransactionに対する制裁とか、はよヤメレ

   2)米朝間の信頼醸成:軽水炉(原子力発電)の提供は、信頼構築の物理的基礎だから、早よくれ

   3)朝鮮半島に、新しい平和保障システムを構築すべき

 

ついでに別のセッションでは、「PSI(拡散に対する安全保障構想)は、米国を孤立化させるためのもの」だと主張していました。

 

第4、5回の6者会合では、北朝鮮が急に強気になっていろいろ主張したり、求めたりしています。特に米国に対しては、在韓米軍から核を撤去すべきとか(1991年に撤去されていますが)、在韓米軍を査察させろとか、韓国に提供している核の傘を取り払え、とか……。

 

そういえば、これらの主張は、1990年代初めに北朝鮮が行ってきたもの。その後見かけなくなりましたが、ここへ来て、復活したようです。というか、最近の北朝鮮は、これまで要求してきたことを、一気にまとめて要求していますね。それらすべてが実現するわけではないことは、北朝鮮も分かっていると思いますが、ここぞとばかりに外交攻勢に出ていることは間違いない。

 

北朝鮮を強気にしているのは、米国のパワーの低下なのでしょう。イラクで苦しみ、ハリケーンにかき回され、ブッシュ政権の内政は窮地に陥っています。米国が北朝鮮に軍事行動をとる余裕は全くない。中東を何とかしたい⇒⇒北朝鮮問題は、とりあえず現状からの悪化を避けるだけで精一杯、というのが、米国の本音のように思われます。

 

だからこそ、第4回の6者会合では、米国も「共同宣言」の成立を強く必要としたし、「軽水炉」の文言が「共同宣言」に盛り込まれることに、最終的には同意せざるを得なかったのでしょう。「軽水炉」の問題については稿を改めたいと思いますが、これが書き込まれたことに、北朝鮮は驚き、また非常に喜んだことは容易に想像できます。米国の足元をみた北朝鮮は、いよいよその外交攻勢を強めてきています

 

北朝鮮、タフです。このゲームは、まだまだ続きます。そしてその間、北の核兵器能力は増強されていきます。米国の研究者の推計では、北朝鮮は現在、6~8発分の核兵器を作れるだけのプルトニウムを持ち、年・1発分のプルトニウムを生産できると見られています。また建設中の50MW原子炉が完成すれば、年・10発分程度のプルトニウムが生産されると考えられています。

  注)カーネギー財団主催シンポジウムでのヘッカー(スタンフォード大)のプレゼンテーション(PDF)
    http://www.carnegieendowment.org/static/npp/2005conference/presentations/hecker.pdf

 

小泉政権も来年9月末までだし、ポスト小泉政権が、北朝鮮問題の解決に小泉程度に熱心になるという保証はない。米国の中間選挙も来年。それ以降はブッシュ政権はレームダックになり、多分、北朝鮮の問題なんて、どうでもよくなるでしょう(内政&中東重視)。とりあえず来年中に、何らかの解決の道筋をつけ、少なくとも北朝鮮の核開発を凍結に持ち込まないと……。でも、厳しいなあ。手詰まりです。