猪口孝『国際政治の見方:9.11後の日本外交』(ちくま新書)

を読み始めています。

 

まだ出だしですが、面白い。

  

このなかで、国際的な激動と日本外交の展開を関係付ける概念として、「浸透可能な隔離」(グラムズ)という言葉を用いています。少々引用すると、

 

「日本の外国との交わり方は、良くいえば、用心深く、段階的であることが多い。悪くいえば、現状維持的で、惰性的である。国際政治の出来事が激震でも、このような仕組みのために、国内社会への衝撃を最小にする工夫と努力が何重にもある。歴史的に見ても、外国の影響は慎重に導入し、選択的に浸透させるのが普通である。古代日本国家創設時において、文字、武器、仏教そして制度が大陸から導入されたが、その浸透は選択的であり、多くの場合混交され、あるいは一時的なものに留まった。」(19頁)

 

たしかに。


(以下、感想文) 

こうしたかかわり方を可能にしたのは、日本の置かれた地理的要因だったのだろうと思います。いうまでもなく、日本は四方を海で囲まれており、アクセスは容易ではありません。陸続きの国家とは異なり、いろいろなものがダイレクトに入ってくるわけではない。変化や影響も、「海」というバッファーにより緩和されるので、取り立てて敏感になる必要がない。じわじわと日本に入ってくる間に、取捨選択できるし、いいところだけ取り出して混ぜくってしまうこともできる。「迅速に対応」する前に、「注意深く状況を判断する」ことができたわけです。

  

国民気質のようなものって、なかなか変わらないものだといいます。今でも、日本って、そうしたかかわり方をしていますよね。外国からは、「日本の決定は遅い」と言われ続けています。でも、少しずつでも変わらざるを得ない。「浸透」のスピードが、格段に速くなっているからです。インターネットは、その典型。世界の動きも、スピードアップしています。「注意深く状況を判断する」前に、「迅速に対応」しなければならない場面が確実に多くなっている。その分、「受け身」はとりずらくなるかもしれません。


HiroT-Blueはのー天気楽天家なので、「日本は、まあ何とかするんだろう」と思うわけですが、スピードを重視しつつ、インパクトを緩和するという、異なる2つの要素を組み合わせた外交が、今後ますます必要になるように思います。なんか漠然としすぎていますけど。

(感想文終わり)

 

 

 

まだ、256ページ中50ページ弱を読んだばかり。続きが楽しみです。