秘密裏に核兵器開発を模索していると見られているイラン。「反体制派」もウラン濃縮に賛成しているとのこと。ブッシュ政権が狙うような「体制転覆(レジーム・チェンジ)」が、仮にイランで成功しても、安全保障や国家のプライドから核兵器を持ちたいというイランの心理を変えるのは、難しいのかもしれません。

 

北朝鮮を「恫喝系」交渉マスターとすると、イランは「洗練系」。ただ、所々にほころびが見え隠れします。それだけこそこそと核兵器開発を行うというのは難しいことなのかもしれません。ババンド元大使が言うように、ウラン濃縮はNPT(核兵器不拡散条約)上、禁止されているわけではありません。日本もウラン濃縮を実施しています。でも、イランが問題視されているのは、核の闇市場など裏ルートで濃縮技術や資機材を入手しようとしたこと。核兵器取得の強い意志を疑われても仕方ありません。というか、それ以外に考えられません。これを正当化しようとするのは、至難の業。ウラン濃縮について話しつつ、「近隣には原発だけでなく核兵器を保有する国々もあり、国家のプライドの問題でもある」との発言も、???ですよね。濃縮施設ではなく、「核兵器がほしい」といっているようにしか、受け止められないのですが……。

 

 
「イラン核問題:「国内での濃縮実施」を擁護 元国連大使」(毎日)

 【テヘラン春日孝之】イランの反体制派に属しながらイラン外務省の国際問題研究機関で国際法を教えるヘルミダス・ババンド元国連大使(71)が、毎日新聞のインタビューに応じた。イランの核問題を巡り、核兵器製造につながるとして、欧米がウラン濃縮工程のロシア移転案を支持していることについて、「国内での濃縮実施」にこだわるイラン政府の立場を基本的に擁護した。

 ババンド氏は国内でのウラン濃縮について「国際法上、何の問題もない」と説明。「近隣には原発だけでなく核兵器を保有する国々もあり、国家のプライドの問題でもある」と語った。隣国ではロシアとパキスタンが核保有国。中東ではイランと敵対するイスラエルが保持するとされる。

 欧米は、イランが原子力の「平和利用」を隠れみのに核兵器製造の「意図」があると疑念を抱いている。ババンド氏は「イランが国際原子力機関(IAEA)の査察に協力しないのなら、イランの『意図』に疑問を抱く権利はある。しかし、軍事施設を含むこれまでの査察でも疑惑は立証されていない」と述べた。

 一方で、イラン政府も核兵器製造の野心を抱いているような「あいまいな立場を取っている」と指摘。米国については、「イランへの極端な選別的姿勢(二重基準)」という表現で、核の平和利用を巡り、国によって対応に違いがみられる外交姿勢を批判した。

 ババンド氏は外交官出身で79年のイスラム革命を挟んだ約2年間、国連大使を務めた。現在は反体制の穏健派政治組織「国民戦線」のメンバー。

毎日新聞 2005年12月14日 9時48分

http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20051214k0000e030024000c.html